「はあ?も行くのかよ」
ルキアがソウルソサエティに連れ帰られてしまった後、浦原商店で最悪な目覚めを経験した
俺は、下駄帽子と訓練をすることになった。悔しいが、今の俺には確かに力が無い。
10日間で、絶対に死神としての力を取り戻してやる--------と意気込み、
テッサイさんの昼食を味わっていた。腹が減っては戦ができぬ、ってやつだ。
しかし、そこには何故か自然に輪の中に溶け込んで、
一緒に昼食を食べている居候のの姿。
「・・・?行きますよ?」
そう言って茶を啜るは、ルキアが現世に来る前に「記憶喪失で家が分からない」と
家の黒埼医院に駆け込んできた奴だ。何故か黒スーツを着用して、右目に眼帯を
つけていたが、は結構な美少女。そんな奴に涙目で迫られたときは、ちょっと
グッと、くるモンがあったよな。・・・・って、何言っているんだ俺は!!啓吾じゃあるまいし。
まあ、でも特筆するのは「記憶喪失の女」って奴ぐらいで、まさか霊感を持っていたとは
思いもよらない。もしかして死神の俺が見えていたのか?と問えば、「是」との
答えが返ってきた。
「ルキアさんが君の部屋の押入れにいたことも、ぬいぐるみの中身があることも知っていますよ」
「でも、さんって霊感無いっすよね」
「そうなのか!?」
「・・・・ええ、殿からは全く霊圧は感じられません」
「・・(シロの所為でしょうか・・・)」
霊圧が感じられないのに、死神の姿が見えていたなんて、実はってすごい奴なのか?
確かに、常日頃から纏う雰囲気は常人とは違うが、普通の奴だと思っていたのに。
「で、なんでお前まで行くんだよ?」
「ルキアさんはお友達ですから。あと、一人探し人がいまして」
「探し人、ですか?」
「ええ、(見た目が)5歳(ぐらい)の子供(の皮を被ったホムンクルス)
なんですけど。何処(の世界)で逸れてしまったのか・・・」
何か今、含んで無かったか?そう尋ねると
ふるふると首を振り、両手を合わせて「ご馳走様でした」とはテッサイさんに告げる。
「まあそういうわけで、一護さんの修行に微弱ながらお手伝いさせていただきますね」
「・・・おやおや、それは・・・」
浦原さんは扇で口元を覆い隠し、の顔を窺っている。つーか、何か怖ええんだけど。
これは、もしかしなくても、目ぇ付けられたんじゃね?俺だって、に
力があるとは思えない。こんな細っせえ身体で、死神の力についていけるのかよ
--------と、純粋に心配しているのだ。「これでも現役時代は結構強かったんですから」
そう、さらりと言われてもな。そもそも現役時代ってなんだよ。
「まあまあ、そんな細かいところは置いておいて、早く修行に移ってしまいましょう」
「おお、そうですな」
「黒崎さん、頑張ってくだされ☆」と、ウインク付きでテッサイさんは言う。・・・
気持ち悪い。作る飯は美味いが、ルックスはまさに顔 面 凶 器だ。う、
と込み上げてきた吐き気を押さえるために、口元を手で覆えば、は顔色を変えて
俺の背中を擦ってくる。いい奴だな、普通n「大丈夫ですか、一護さん。悪阻ですか?
誰の子ですか・・・?」前言撤回、お前嫌な奴だな。つーか、確信犯だろ、お前と
浦原さんは。
「するなら早くしようぜ」
「黒崎さんたら、せ・っ・か・ちサン☆」
「せっかちすぎる男は、嫌われますよ一護さん」
「ウゼエエエエエエエ!」
つーか、こんな漫才してる暇あるのかよぉぉぉぉぉ!!!!
*
「じゃあ、お手並み拝見ってやつですね」
所変わって、浦原さんのお店の地下にある勉強部屋。梯子を降りた先には広大な
空間が広がっていて、しかも殺風景だ。惚ける浦原さんに一護さんが突っ込んでいたが、
彼は「死神」というところを除けば羨ましいほどの普通の人。今までの世界ってなんだった
のだろう、と真剣に悩んでしまう。そうしている内に、一護さんと雨さんが戦い始めた。
あのような可愛い女の子が戦っている姿は中々にいいものだ。・・・いや、最近は
セリムの奴に脳内が侵食されていていけない。
「虚化、ですか・・・」
なかなか興味深いですねえ。一護さんと浦原さんが戦う姿を見ながら、辺りを見渡した。
恐らく、このテッサイさんも、ジン太くんとやらも、力を持っている。それにしても
「力を持つもの」の多いこと、多いこと。前の忍者の世界や錬金術師が居た世界は、
それ自体が職業として認められていたから、戦える人間が普通にいてもおかしくはなかった。
しかし、この空座町はどう見ても---------一般人だらけだ。
(この世界は「死神」の世界だ)
それにしても、死神の力というものは便利なものだと思う。どうせこれからもシロの奴に
飛ばされるのだ、力は持っていて損はないのかもしれない。霊体にならなければならないというのが、
玉に瑕ではあるが。
「何だあの斬魄刀・・・」
と、ジン太くんが呟いた。目の前には、柄も鍔もない斬魄刀を持った一護さんの姿。
「斬月」。どうやら、それが一護さんの持つ刀の名前らしい。月を斬る、か。
いやはや、その名前にはどんな意味が込められているのか。顔付きの変わった
一護さんを見ていると、ちり、と何かを焦がすような音。
何か、変だ。
ジーンズの後ろポケットから練成陣の画かれた手袋を取り出し、両手に装着する。
キュ、と指の間まで引っ張ると、岩の陰から飛び出した。
「な、殿・・!?」
「おい馬鹿、戻って来いよ!」
馬鹿とは何だ、馬鹿とは。まあ、子供の戯言だから別に気にはしないが。くるりと振り返り、
テッサイさんに笑顔を向けると、「ご心配なさらず」と告げた。
「うまく避けてくれよ・・・」
「ハイ?」
「多分、加減できねえ」
ひゅ、と一護さんが刀を振り下ろすのが見えた。
指先を擦り合わせる。
火花が小さく発生したのを、確認した。
ドォオオオオンッ
「・・・・うわ、思いっきりやってしまった・・・」
すみません、殺すつもりでやったのでは無かったのですが。
呆然とこちらを見つめる4対の目に、乾いた笑いを零す。浦原さんの帽子は、見るも無残に
焼け焦げていた。
<2009.9.27>
(そう、言い訳をするならですね。ちょっと鬱憤が溜まってたのかもしれません)(
貴女の気分で殺さないで欲しいんすけど・・・・)