どうやら、この世界は忍者が主体であるらしい。忍者が蔓延り、それを生業としてこの 世界の人間は生きている。それに気づいたのは、この世界に来て一週間ほど経った頃だった。 何故この世界に飛ばされたのかは分からない。でも多分、真理の気まぐれなのだろうと思う。 この世界が嫌だと思っても、「真理がまた気まぐれを起こす」まで、どの世界にも行けないし、 帰れないのだ。それは前回と前々回の出来事で百も承知だ。だから私は、この世界で のんびり生きていこうかとそういう心積もりでいる。



今回も、異世界トリップへの同伴者はプライド、つまりセリム・ブラッドレイだった。 セリムとは前々回の世界でいろいろあったが、なんだかもう今はどうでもいいという気持ちが強い。 そもそもここにキングはいないわけで、ホムンクルスを憎んでいてもしょうがないと思ったからだ。


その当の本人である、セリムはと言えば。あの雨の日セリムが拾ってきた、「ナルト」君 とともにアカデミーに通っている。別に今のままでも強いんだし、通わなくてもいいのではないか と言ってはみたけれど、

「面白そうじゃないですか」

と言って得意な笑みを披露したものだから、私だけではなくナルトくんも顔が引きつっていた。 また禄でもないこと考えてるな、と思ったけれど、そうなれば必殺他人の振りだ。


ナルトくんはセリムに拾われてから、いろいろと忍術を頑張って習得していた。 それこそ文字通り、血反吐を吐く思いだっただろう。実際に大怪我をして倒れることも頻繁だったし。 だけれど、こんなに小さいのに、と同情することはもちろん、私もセリムもなかった。 前々回の世界ではそれが当たり前だったのだから。だからと言って放置しているわけではないから 、怒られるいわれはない。きちんとご飯も食べさせているし、お風呂だって睡眠だって させている。セリムに拾われるまでのナルトくんの生活と比べれば、天と地ほどの差があるでしょう、 と三代目に告げると、あの好々爺は胃を押さえていたっけ。


カラン、カラン、


あれ、お客さんが来た。入り口に飾られている、入店者を知らせる鐘の音を聞き、 先ほどまで、本当に文字を追っていただけの本から目を放し、ゆっくりと立ち上がる。


「よ、
「こんにちは、アスマさん」


意気揚々と声をかけてきたのは、トレードマークのタバコを口にくわえた、猿飛アスマ さんだった。右手を上げ、こちらに近寄ってくる。


「どうされたんですか?また、何か壊されたんですか?」
「・・・はは、いや、今日は修理を頼みに来たんじゃないんだ」
「と、いいますと?」


このアスマさんという方は、三代目の息子さんらしい。私がここに店を開いてからちょくちょく通ってくれる 常連さんだ。何でも、表にかけてある看板に惹かれたから入ってみたそうだ。確かに、 『人間、動物以外なら何でも直せます』のフレーズには、思わず足を止めて しまうのだとあの青年も言っていた。ナルトくんすら怪訝な表情をしていたけれど、 だって事実だし、しょうがないでしょう。


「今、暇か?」
「・・・見ての通りです」


今日は珍しく暇なのだ、と手に持っていた本をアスマさんに見せると、アスマさんは困ったように笑った。 確かに、修理屋ってあまり収入がないけれど、もし金がなくなれば生成すればいいだけだ。 私はこの世界で軍人ではないのだ、咎める人は誰もいない。


「ちょっと飯でも食いにいかねえか」
「奢りですか?」
「・・・あー分かった、分かったよ。好きなもん奢ってやるよ」
「わーいありがとうございます太っ腹アスマさん大好きです愛してます」


一気にノンブレスでそう伝えれば、アスマさんは頭を押さえて「棒読みかよ・・・」と 小さく呟いていた。だってこれがもし本気ならアスマさんロリコンになってしまいますよ。 精神年齢は別として。


「で、どこがいいんだ?」
「高くて美味しくて綺麗で楽しいところ、つまり焼肉がいいです」
「真昼間から食うのかよ・・・」


つーか、俺の給料・・・。といいながら、アスマさんは財布の中身を確認していた。いやですねえ、 いくら私でもそんなに食べませんよ。部屋の戸締りを済ませ、火の元、ガス、水道を 確認して家から出る。今頃セリムたちは他の子どもに混ざって、勉強しているのだろう。 でも、ナルトくんは真面目に聞いてないんだろう。あの子はいつの間にか暗部に入ってしまったし。


「アスマさん、行きましょう」
「おう」


私も忍術、習おうかなあ、なんて隣のアスマさんを見上げながら思った。






(2009.8.22)





説明的なはなし。アスマさぁああああん!何 故 死 ん だ し。 三代目にしても、エロ仙人にしても、自分の好きなキャラばかりが死んでいく\(^0^)/