ザアザア、ザアザア。
雨が、激しく窓を打ち付けていた。窓ガラスにぶつかり砕け散った雨の滴は、ゆっくりと
窓を伝い、後から後から流れ落ちる滴に吸い取られていく。そんな様を見ながら、は
こっそりと溜め息を吐いた。その原因は、が今日傘を持ってきていないからである。
朝に見た天気予報がここまで外れるとは・・・誰も悪くは無いのだが、思わずお天気お姉さんに
悪態を吐いてしまっても仕様のないことだろう。
(・・・ずぶ濡れ決定か、)
数時間後の自分の姿を想像して顔を歪めると、先程から自分を呼んでいた教師に視線を戻した。
「ー。余裕みたいだな、これ解いてみろ」
「・・・はい」
ああもう、最低。今日は最悪の誕生日になりそうだ。そう考えながら、教師に与えられた問題を
黒板に解き始めた。
曖昧な幸福に終止符を
すぐさま思い浮かんだのは、「痛い」というより、「なんで?」だった。だって今日は私の誕生日だ。
久々に友達の京子と帰って、マフィンと髪ゴムとブレスレットと言う何だかちぐはぐな誕生日プレゼントをもらって、
自分の家に帰るつもりだったのだ。そうして今までの私のような平々凡々な一日を終わらせる気だったのだ。
なのに。なのに、どうし、て。
-----------どうして私は死んでるの。
大きなトラックが電柱に正面衝突し、私は----いや、私の’身体’は道路に横たわっている。
トラックにぶつかった所為か、私の身体はひしゃげていて、どくどくと一生お目にかからないだろう
と言うほどの血液が流れ出していた。
「ひ、ぅ・・・う」
気持ち悪い。酷く、吐き気がする。だけれど、あんなに血が出ていて、痛いはずなのに私はどこも痛まない。
(いや、きっと’私の身体’は痛いだろうが)ああ、これが’死’ってやつか、と酷く客観的な自分がいる。
ふと、どこかで私の名を呼ぶ声がした。
「・・・きょーこ」
傍目にも分かるぐらい真っ青な顔をして、「ちゃんちゃん」と私の名を呼ぶ。
それにそっと目を伏せて、ごめんと一言呟いた。
酷い姿を見せてごめん。
返事を返せなくてごめん。
--------心残りがなくて、ごめん。
きゅ、と唇を噛んで目を開けると、そこは真っ白な世界だった。